PAGOT

おもいでばなし vol.1

2021.02.20


今でも包丁を研ぐたびに思い出すことがある。

職人になりたいと、会社を辞めて飛び込んだ工場では多くことを教えてもらった。
道具の使い方やメンテナンス方法など。
最初の頃は自分が出来る仕事も少なく、でも少しでも早く職人になりたくて出来ることを必死に探していた。
そんな時に、ベテランの方から使い古しの包丁をいただいて研ぎ方を教えてもらった。
そこからは暇を見つけては包丁を研ぐようになった。

当時は「職人とはこうあるべきだ」とストイックに考えすぎていた。
結局、その作業を1年間続けてきたが一度たりとも自分で納得のいく仕上がりにはならなかった。
その後、別の工場で働くことになった。

そこでも変わらず隙間時間を見つけては包丁を研いでいた。
そんな時、技術の基礎を教えてくれたベテラン職人の方に言われた
「俺たちは鞄職人で研ぎ師じゃないよ」と。

「もちろん自分の扱う身の回りの道具の性質を理解することや道具をいい状態にしておくことは必要だ。」
と言いながら僕の包丁を使って革を裁断してくれた。

「ほら、全く問題なく切れるやろ」
「自分で完璧に研げなくてもいいねん。だって俺たちは縫製職人なんやから」
その言葉で、一気に気が楽になったのを覚えている。

その日、やっと”職人” から”鞄職人”としてのスタートが切れた気がする。


未だに包丁研ぎは得意ではないが、より良い鞄を作るために包丁を研いでいる。


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